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宇都宮地方裁判所足利支部 昭和61年(ワ)33号・昭61年(ワ)119号 判決

主文

一  第一事件被告蘇原康弘及び第一事件被告蘇原宗一郎は、第一事件原告に対し、各自、金七〇七万〇九〇六円及びこれに対する昭和五八年一月一六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  第一事件原告の第一事件被告新井恵子、第一事件被告新井博、第一事件被告日産火災海上保険株式会社及び第一事件被告大正海上火災保険株式会社に対する各請求並びに第一事件被告蘇原康弘及び第一事件被告蘇原宗一郎に対するその余の各請求はいずれも棄却する。

三  第二事件被告は、第二事件原告に対し、金一三六五万七七五五円及び内金一一五八万四七六七円に対する昭和六一年一〇月一八日から、内金二〇七万二九八八円に対する平成二年一月一九日から、各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

四  第二事件原告のその余の請求は棄却する。

五  訴訟費用中、第一事件原告と第一事件被告新井恵子、第一事件被告新井博、第一事件被告日産火災海上保険株式会社及び第一事件被告大正海上火災保険株式会社間に生じた費用は第一事件原告の負担とし、第一事件原告と第一事件被告蘇原康弘及び第一事件被告蘇原宗一郎間に生じた費用は、これを一四分し、その一三を第一事件原告の負担とし、その余を第一事件被告蘇原康弘及び第一事件被告蘇原宗一郎の負担とし、第二事件原告と第二事件被告間に生じた費用は、これを五〇分し、その一を第二事件原告の負担とし、その余を第二事件被告の負担とする。

六  この判決は、一及び三項に限り、仮に執行することができる。

事実

第一  当事者の求めた裁判

(第一事件について)

一  請求の趣旨

1 第一事件被告新井恵子及び第一事件被告新井博は、第一事件原告に対し、連帯して、金九九〇七万六四六七円及び内金九三〇七万六四六七円に対する昭和五六年八月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2 第一事件被告日産火災海上保険株式会社は、第一事件原告に対し、金六二七万円及びこれに対する昭和五六年八月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

3 第一事件被告蘇原康弘及び第一事件被告蘇原宗一郎は、第一事件原告に対し、連帯して、金九九〇七万六四六七円及び内金九三〇七万六四六七円に対する昭和五八年一月一六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

4 第一事件被告大正海上火災保険株式会社は、第一事件原告に対し、金六二七万円及びこれに対する昭和五八年一月一六から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

5 訴訟費用は第一事件被告らの負担とする。

6 仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1 第一事件原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は第一事件原告の負担とする。

(第二事件について)

一  請求の趣旨

1 第二事件被告は、第二事件原告に対し、金一三九一万五三八〇円及び内金一一五八万四七六七円に対する昭和六一年一〇月一八日から、内金二三三万〇六一三円に対する平成二年一月一九日から、各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2 訴訟費用は第二事件被告の負担とする。

3 1につき、仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1 第二事件原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は第二事件原告の負担とする。

第二  当事者の主張

(第一事件について)

一  請求原因

1 交通事故の発生

(一) 第一事故

発生日時 昭和五六年八月三〇日午前一〇時四〇分頃

発生場所 栃木県足利市朝倉町四四一番地

加害者 第一事件被告新井恵子(以下、「被告恵子」という。)

加害車両 自家用小型乗用自動車(栃五七ほ八四〇九)(以下、「新井車両」という。)

新井車両所有者 第一事件被告新井博(以下、「被告博」という。)

被害者 第一事件原告(以下、「原告」という。)

(二) 第二事故

発生日時 昭和五八年一月一六日午後六時三〇分頃

発生場所 栃木県足利市田中町九五番一号先路上

加害者 第一事件被告蘇原康弘(以下、「被告康弘」という。)

加害車両 自家用小型乗用自動車(栃五七ひ八六四四)(以下、「蘇原車両」という。)

蘇原車両所有者 第一事件被告蘇原宗一郎(以下、「被告宗一郎」という。)

被害者 原告

2 事故態様

(一) 第一事故

被告恵子は、前記日時に新井車両を運転し、前記場所交差点に差し掛かった際、前方不注意により、信号待ちのため停車していた原告運転の被害車両(以下、「原告車両」という。)に気付くのが遅れ、同車後部に自車前部を追突させた。

(二) 第二事故

被告康弘は、前記日時に蘇原車両を運転し、前記場所道路上で渋滞のため停車していたが、左後方の安全を確認しないまま左側車線に急に車線変更をしたため、折から同車線を直進走行してきた原告車両の右側面に自車左前部を衝突させた。

3 受傷部位及び入通院経過

(一) 受傷部位

(1) 第一事故

頚部挫傷、腰部挫傷

(2) 第二事故

頚部挫傷、腰部挫傷

(二) 入通院経過

(1) 第一事故のみによる入院

昭和五六年九月五日から昭和五七年七月一三日まで(三一二日間)鹿山整形外科医院

(2) 第一及び第二事故による入院

昭和五九年一〇月二九日から昭和六〇年三月八日まで(左記松戸市立病院入院期間を除く一二二日間)鹿山整形外科医院

昭和五九年一一月五日から同月一三日まで(九日間)松戸市立病院

(3) 第一事故のみによる通院

昭和五六年八月三〇日、同月三一日(二日間、実日数二日)医療法人杏林会山辺今井病院

昭和五六年九月一日から同月四日まで(四日間、実日数二日)鹿山整形外科医院

昭和五七年七月一四日から昭和五八年一月一六日まで(一八七日間、実日数一二一日)鹿山整形外科医院

(4) 第一及び第二事故による通院

昭和五八年一月一七日から昭和五九年一〇月二六日まで(六四九日間、実日数三六八日)鹿山整形外科医院

昭和五九年一一月一四日から同年一二月一〇日まで(二七日間、実日数四日)松戸市立病院

昭和六〇年三月九日から同年六月二八日まで(一一二日間、実日数二〇日)鹿山整形外科医院

4 後遺障害の程度及び等級

(一) 原告の被っている後遺障害は、頚部挫傷、腰部挫傷による神経機能の障害であり、他覚所見として、頚椎第五/六間狭小、頚椎前屈位側面側角状変形、右回旋腱板損傷、スパーリング症候陽性、ジャクソン症候陽性、左外転神経麻痺、右内耳障害、握力低下が、自覚症状として、右肩激痛、右第二ないし四手指震え、右手首付近から右第三ないし五手指の痺れ、感覚鈍麻、上肢の血行障害、頚部から肩、上肢の凝り、眩暈、頭痛、左目視力の低下、いらいら、身体が疲れやすい等がある。

(二)原告は、本件後遺障害により、職業上著しい支障をきたしており、かつ、日常生活上にも種々の支障をきたしているから、後遺障害等級七級四号に該当する。

5 責任原因

(一) 被告恵子は、新井車両の運転者であり、前記のとおりの過失により、本件第一事故を惹起させ、よって、原告に損害を与えたものであるから、民法七〇九条による損害賠償責任がある。

(二) 被告博は、新井車両の所有者であり、自己のため同車を運行の用に供していたものであるから、自動車損害賠償保障法(以下、「自賠法」という。)三条による損害賠償責任がある。

(三) 被告康弘は、蘇原車両の運転者であり、前記のとおりの過失により、本件第二事故を惹起させ、よって、原告に損害を与えたものであるから、民法七〇九条による損害賠償責任がある。

(四) 被告宗一郎は、蘇原車両の所有者であり、自己のため同車を運行の用に供していたものであるから、自賠法三条による損害賠償責任がある。

(五) 第一事件被告日産火災海上保険株式会社(以下、「被告日産火災」という。)は、同社の自動車損害賠償責任保険(以下、「自賠責保険」という。)証明書番号HGC二一一-二八三七二六が新井車両を付保していたのであるから、本件第一事故により生じた被告恵子及び被告博の原告に対する損害賠償責任につき、同保険の契約範囲内で原告に対する賠償責任がある。

(六) 第一事件被告大正海上火災保険株式会社(以下、「被告大正海上」という。)は、同社の自賠責保険証明書番号B-〇五九-八六九七-一が蘇原車両を付保していたのであるから、本件第二事故により生じた被告康弘及び被告宗一郎の原告に対する損害賠償責任につき、同保険の契約範囲内で原告に対する賠償責任がある。

6 損害

(一) 第一事故のみによる損害(昭和五六年八月三〇日から昭和五八年一月一六日までの損害)

<1> 治療費 金一八〇万〇〇八六円

<2> 入院諸雑費 金一八万七二〇〇円

一日金六〇〇円の割合による三一二日分

<3> 休業損害 金一三〇九万四五五四円

原告の仕事は、高級婦人服の服地の裁断であるが、昭和五六年八月三〇日の本件第一事故の日から昭和五八年一月一六日の本件第二事故の日までの全期間(五〇五日間)仕事ができなかった。昭和五六年五月から同年七月までの三か月間の売上高は、東都服装に対し、金一六九万〇五〇〇円、ブルーファッションに対し、金七五万七二四〇円の合計金二四四万七七四〇円、その間の諸経費は、電気代金三万一六七七円、電話代金四万一二八〇円、運賃金四万一一〇〇円の合計金一一万四〇五七円であるから、右休業期間の休業損害は、金一三〇九万四五五四円(計算式、(金二四四万七七四〇円-金一一万四〇五七円)÷九〇日×五〇五日=金一三〇九万四五五四円)となる。

<4> 通院交通費 金九万六七一〇円

<5> 入通院慰謝料 金一九八万円

<6> 合計 金一七一五万八五五〇円

(二) 第一事故及び第二事故による損害(昭和五八年一月三一日から昭和六〇年六月二八日までの損害)

<1> 治療費 金八〇万六九八九円

<2> 入院諸雑費 金七万八六〇〇円

一日金六〇〇円の割合による一三一日分

<3> 休業損害 金二三一八万一二五一円

本件第二事故の日の翌日である昭和五八年一月一七日から後遺障害固定日である昭和六〇年六月二八日まで八九四日間の休業損害は、金二三一八万一二五一円(計算式、(金二四四万七七四〇円-金一一万四〇五七円)÷九〇日×八九四日=金二三一八万一二五一円)となる。

<4> 通院交通費 金二二万六一七〇円

<5> 入通院慰謝料 金一八三万九〇〇〇円

<6> 後遺障害慰謝料 金六六八万八〇〇〇円

<7> 逸失利益 金七六二一万六二一九円

原告は、後遺障害固定日である昭和六〇年六月二八日当時四五歳であるから、就労可能な六七歳までの二二年間、年収金九三三万四七三二円(計算式、(金二四四万七七四〇円-金一一万四〇五七円)×四=金九三三万四七三二円)、労働能力喪失率五六パーセント(後遺障害等級七級四号)、新ホフマン方式(係数一四・五八〇)で計算すると、逸失利益は、金七六二一万六二一九円となる。

<8> 弁護士費用 金六〇〇万円

<9> 合計 金一億一五〇三万六二二九円

7 損益相殺

(一) 被告恵子及び被告博から、金二七七三万八三一二円

(二) 被告日産火災から、後遺障害等級一二級の自賠責保険金として、金二〇九万円

(三) 被告大正海上から、金三二九万円(自賠責保険金傷害分として、金一二〇万円及び後遺障害等級一二級の自賠責保険金として、金二〇九万円)

8 請求金額

(一) 被告恵子及び被告博に対し、金九九〇七万六四六七円

前記6の合計金一億三二一九万四七七九円から前記7の合計金三三一一万八三一二円を控除した残金。

(二) 被告日産火災に対し、金六二七万円

後遺障害等級七級の自賠責保険金八三六万円から前記7(二)の金二〇九万円を控除した残金。

(三) 被告康弘及び被告宗一郎に対し、金九九〇七万六四六七円

前記6(二)の合計金一億一五〇三万六二二九円から前記7(二)、(三)の合計金五三八万円を控除し、更に、前記7(一)の金二七七三万八三一二円から前記6(一)の合計金一七一五万八五五〇円を控除した残金一〇五七万九七六二円を控除した残金(計算式、(金一億一五〇三万六二二九円-金五三八万円)-(金二七七三万八三一二円-金一七一五万八五五〇円)=金九九〇七万六四六七円)。

(四) 被告大正海上に対し、金六二七万円

後遺障害等級七級の自賠責保険金八三六万円から前記7三の内後遺障害等級一二級の自賠責保険金二〇九万円を控除した残金。

よって、原告は被告らに対して、請求の趣旨のとおりの判決を求める(なお、本件第一事故と本件第二事故は、共同不法行為というべきであるから、被告らは、全て不真正連帯債務者であり、連帯支払いを求める。)。

二  請求原因に対する被告らの認否(被告恵子、被告博、被告日産火災)

1 請求原因1の事実は認める。

2 同2(一)の事実中、被告恵子が新井車両を運転して、事故発生場所である交差点において、原告車両に追突したことは認め、その余の事実は否認する。

同2(二)の事実は不知。

3 同3(一)(1)の事実は認める。同3(一)(2)の事実は不知。同3(二)(1)、(3)の事実は認める。同3(二)(2)の事実中、原告がその主張のとおり入院したことは認め、それが第一事故によることは否認する。同3(二)(4)の事実中、原告がその主張のとおり通院したことは認め、それが第一事故によることは否認する。

4 同4(一)の事実は不知、同4(二)の事実は不知ないし否認する。

5 同5(一)の事実中、被告恵子の過失の態様は否認するが、その余の事実及び同報告に民法七〇九条による損害賠償責任があることは認める。同5(二)、(五)の主張は認める。

6 同6(一)の事実は不知ないし否認する。同6(二)の事実中、その主張の損害が第一事故によることは否認し、その余の事実は不知。

7 同7の事実は認める。

8 同8(一)、(二)の主張は争う。

9 本件第一事故に基づく原告の傷害は、遅くとも本件第二事故の直前において症状が固定しており、原告主張の本件第二事故の新たな症状と本件第一事故との間には相当因果関係はない。

(被告康弘及び被告宗一郎)

1  請求原因1(一)の事実は不知。同1(二)の事実は認める。

2  同2(一)の事実は不知。同2(二)の事実は認める。

3  同3の事実は不知。

4  同4の事実は不知ないし否認する。

5  同5(三)の事実中、被告康弘が運転者であることは認め、その余の事実は不知ないし否認する。同5(四)の事実中、被告宗一郎が所有者であることは認め、その余の事実は不知ないし否認する。

6  同6、7の事実は不知ないし否認し、8の主張は争う。

7  本件第二事故は、被告康弘が、信号待ちの渋滞のため停車していたところ、信号が青に変わったのに先行車が右折の信号を出して停止していたため、左折の合図及び後方の確認をせずに進路を左に変更しようと時速約五キロメートルで進行した瞬間、人を乗り降りさせるために時速約七キロメートルで路側帯を直進してきた原告車に接触衝突し、原告車が植え込みのコンクリート枠に衝突したというものであり、両車両の速度及び物損の状況からみて、到底原告が傷害を受けるようなものではない。現に、警察も、事故当日は物損事故扱いで処理していたが、原告が診断書を提出したため人身事故扱いとなったものである。

8  右回旋腱板損傷は、本件第二事故に起因するものではない。

9  仮に、本件第二事故に起因する原告の受傷があったとしても、その程度は極めて軽微なものであるにもかかわらず、原告の治療期間は異常に長い。原告には、加齢性と目される椎間板狭小化が認められ、事故以前から変形性脊髄性の素地があったし、また、心因的要素が関与していることも十分考えられるから、受傷による損害の全てが相当因果関係にあるとはいえず、少なくとも割合的認定がなされるべきである。

(被告大正海上)

1  請求原因1(一)は不知。同1(二)の事実は認める。

2  同2(一)の事実は不知。同2(二)の事実は認める。

3  同3の事実は不知。

4  同4の事実は不知ないし否認する。

5  同5(五)の責任は認める。

6  同6の事実は不知ないし否認する。

7  同7(三)の事実は認める。

8  同8の主張は争う。

9  右回旋腱板損傷は、本件第二事故に起因するものではないし、数カ月で完全に治癒するものであるから、後遺障害とは関係がない。

昭和五九年五月頃より昭和六〇年七月頃の方が後遺障害の内容が憎悪したとは全く考えられず、かえって、後遺障害と判断されていたものが改善されたとも理解し得る。

原告の本件第二事故に起因する後遺障害は、最大限に評価しても傷害等級一二級にとどまる。

三 抗弁

(被告恵子、被告博、被告日産火災)

1  過失相殺

原告運転の原告車両及びそれに続いて被告恵子運転の新井車両が、本件事故現場の交差点にいずれも右折を予定しつつ徐行しながら差し掛かったところ、進行方向の信号が黄から赤(但し、右折は青)に変わった。原告は、右折を予定していたのであり、信号は右折が青であるから、そのまま交差点に進入し右折すべきであるのにもかかわらず、赤信号のみに気を取られて理由のない急ブレーキをかけて停車したため、新井車両は徐行していたものの車間距離が少なかったため、原告車両に追突してしまったものである。このような事故態様に照らせば、過失割合は、原告二割、同被告八割が適当である。

2  過失相殺の規定の類推適用

本件第一事故による原告の症状については、その主な原因は、原告がそれ以前に既に有していた加齢性変化に基づく頚椎椎間板症及び変形性脊髄症にあるから、過失相殺の規定(民法七二二条二項)を類推適用して、損害額を大幅に減額すべきである。

(被告康弘及び被告宗一郎)

1  過失相殺

原告は、道路交通法一七条のやむを得ない理由がないにもかかわらず、路側帯を走行していたものであり、本件事故につき原告にも過失がある。そして、原告の走行速度については争いがあるが、仮に、原告が主張するような時速三〇キロメートルで走行していたとしたら過失割合は、原被告各五割が適当である。

四 抗弁に対する認否

全て争う。

(第二事件について)

一  請求原因

1 交通事故の発生

第一事件請求原因1、2のとおり

2 受傷部位及び入通院経過

(一) 受傷部位

第一事故、第二事故ともに、頚部挫傷、腰部挫傷

(二) 入通院経過

昭和五六年八月三〇日、同月三一日(通院二日間、実日数二日)医療法人杏林会山辺今井病院

昭和五六年九月一日から同月四日まで(通院四日間、実日数二日)鹿山整形外科医院

昭和五六年九月五日から昭和五七年七月一三日まで(通院三一二日間)鹿山整形外科医院

昭和五七年七月一四日から昭和五八年一月一六日まで(通院一八七日間、実日数一二一日)鹿山整形外科医院

昭和五八年一月一七日から昭和五九年一〇月二六日まで(通院六四九日間、実日数三六八日)鹿山整形外科医院

昭和五九年一〇月二九日から昭和五九年一一月四日まで(入院七日間)鹿山整形外科医院

昭和五九年一一月五日から同月一三日まで(入院九日間)松戸市立病院

昭和五九年一一月一四日から昭和六〇年三月八日まで(一一三日入院)松戸市立病院

昭和六〇年三月九日から同年六月二八日まで(通院一一二日間、実日数二〇日)鹿山整形外科医院

3 責任原因

第一事件請求原因5(五)のとおり

4 第一事故による傷害の症状固定時期

原告の本件第一事故による傷害については、遅くとも本件第二事故直前である昭和五七年末日には治癒あるいは症状固定していたものであり、それ以降の原告の傷害に対する治療は、本件第一事故と関連性がなく、相当因果関係はない。

5 不当利得金

しかるに、被告日産火災は、被告恵子が原告に対し、損害賠償債務を負わず、したがって、被告日産火災が原告に対して前記保険の契約範囲内で支払うべき義務がないにもかかわらず、これがあるものと誤信して、昭和五八年一月一六日以降の損害についても、次のとおり、治療費及び休業損害として、合計金一三九一万五三八〇円を支払い、その結果、同額の損失を受け、原告は、同額の利得を得た。

(一) 治療費 合計金七〇万八五七三円

昭和五八年四月一日から昭和五九年八月三一日まで

(二) 休業損害 合計金一三二〇万六八〇七円

昭和五八年一月分から昭和五九年八月分まで、一か月金七七万六八七一円の割合による一七か月分

よって、被告日産火災は、原告に対し、民法七〇三条に基づき、請求の趣旨のとおりの金員の支払いを求める。

二  請求原因に対する認否

1 請求原因1、2の事実及び3の主張は争う。

2 同4の事実は否認する。

3 同5の事実中、被告日産火災の支払い状況は不知、その余の事実は否認する。

4 本件第二事故後の原告の傷害の状態は、本件第一事故と本件第二事故という共同不法行為によって生じたものであるから不真正連帯債務であり、原告が本件第二事故後の原告の傷害による損害につき支払いを受けたとしても、原告が不当利得したことにはならない。

第三  証拠<省略>

理由

第一  第一事件について

一  交通事故の発生

原告と被告恵子、被告博及び被告日産火災間では、原告主張の本件第一事故及び本件第二事故が発生したことは争いがなく、原告と被告康弘、被告宗一郎及び被告大正海上間では、原告主張の各交通事故のうち、本件第二事故が発生したことは争いがなく、弁論の全趣旨によれば、原告主張のとおりの本件第一事故が発生したことが認められる。

二  事故態様

1  原告と被告恵子、被告博及び被告日産火災間では、原告主張の本件第一事故の事故態様のうち、被告恵子が新井車両を運転して事故発生場所である交差点において、原告車両に追突したことは争いがなく、<証拠>によれば、原告車両及びそれに続いて新井車両が、本件事故現場の交差点にいずれも右折を予定しつつ差し掛かったところ、進行方向の信号が黄から赤(但し、右折は青矢印)に変わったが、原告は、そのまま交差点に進入して右折しようとせず、赤信号に気を取られて急ブレーキをかけて停車したため、新井車両は時速約二〇ないし三〇キロメートルで走行していたが原告車両をよく見ておらず、かつ、原告車両との車間距離が少なかったため、原告車両に追突し、原告車両が四、五メートル前方へ押し出されたことが認められ、<証拠判断略>。

2  本件第二事故の事故態様が原告主張のとおりであることは、原告と被告康弘、被告宗一郎及び被告大正海上間では争いがなく、その余の被告間では、弁論の全趣旨により認められる。

三  責任原因及び過失相殺

1  被告恵子に、民法七〇九条による損害賠償責任があること、被告博に、自賠法三条による損害賠償責任があること、被告日産火災に、原告主張の自賠責保険に基づき賠償責任があることは、原告と被告恵子、被告博及び被告日産火災間に争いがない。

他方、前記認定の本件第一事故の事故態様からすれば、原告にも、信号は赤であるが、右折矢印が青であるから、そのまま交差点に進入し右折すべきであるのにもかかわらず、赤信号のみに気を取られて急ブレーキをかけて停車した点で過失があるから、その過失割合は、原告二割とみるのが適当である。

2  <証拠>によれば、被告康弘は、前記日時に蘇原車両を運転し、前記場所の片側一車線道路上で赤信号のため停車していたが、信号が青に変わったのに先行車が右折しようと継続して停車していたため、先を急ぐ余り、先行車の左前方を通過して進行しようと考え、左折の合図も左後方確認もしないままハンドルを左に切り急に車線変更したため、折から、蘇原車両の後ろに五、六台後続車が渋滞していたため、左方の路側帯を右渋滞車を追い抜いて時速約七キロメートルで直進走行してきた原告車両の右側面に蘇原車両左前部を接触させたため、原告はあわててハンドルを左に切り、原告車両は段差のある歩道上に乗り上げ、原告車両のタイヤが、左方植え込みのコンクリート枠に衝突して停止したことが認められ、<証拠判断略>。

そうすると、被告康弘は、左折の合図も左後方確認もしないままハンドルを急に左に切った過失により、本件第二事故を惹起させ、よって、原告に後記損害を与えたものであるから、民法七〇九条による損害賠償責任がある。被告宗一郎が蘇原車両の所有者であることは、原告と同被告間に争いがなく、弁論の全趣旨によれば、同被告は、自己のため蘇原車両を運行の用に供していたものと認められるから、自賠法三条による損害賠償責任がある。被告大正海上に原告主張の自賠責保険に基づく賠償責任があることは、原告と同被告間に争いがない。

他方、原告にも、前記道路は片側一車線であるのに、道路交通法一七条のやむを得ない理由がないにもかかわらず、渋滞車を追い抜くため路側帯を走行していた過失があるから、その過失割合は、原告二割とみるのが適当である。

四  傷害の程度及び後遺症

1  入通院経過

原告が、その主張の期間、その主張の病院・医院に入通院したことは、原告と被告恵子、被告博及び被告日産火災間に争いがなく、その余の関係では、後記2の証拠により、その事実が認められる。

2  傷害の程度及び後遺症

<証拠>によれば、原告は、本件第一事故後、前記入通院経過のとおり入通院したこと、昭和五六年八月三〇日、同月三一日通院した医療法人杏林会山辺今井病院の診断では、傷病名は頚部捻挫であり、悪心プラス、モーレイ検査陽性、右手三、四指に痺れ、握力右一六kg、左二九kg、右上肢の筋力低下、知覚障害がみられたこと、同年九月一日から同月四日まで通院した鹿山整形外科医院の鹿山徳男医師の診断では、傷病名は頚部挫傷、腰部挫傷であり、頚部痛、左上肢の脱力、しんせん等が持続したこと、その後も、同医師の診断では、傷病名は頚部挫傷、腰部挫傷であり、概ね、頚部痛、特に右肩甲部痛と右手指の痺れ、知覚鈍麻が持続し、後遺障害の有無は未定とされて、引続き治療が継続されていたこと、同年九月五日から昭和五七年七月一三日まで同医院に入院したが、同年七月一三日の退院時の診断書には、頚部、右肩甲部痛、重圧感、右手指痺れ著明とあり、翌一四日から昭和五八年一月一五日までの間に同医院に通院したが、退院の前後からは、原告の症状にも良好との診断がみられ、原告自身体調が良くなってきていることから仕事を始めようという気になっていたこと、昭和五七年一一月二六日には、モーレン、ジャクソン検査とも陰性で、翌日測定の握力検査によれば握力はかなり回復していたこと、同年一二月九日のロンベルク症候検査はプラス・マイナスで、レントゲン検査上も徴変はなく、同月には、かなりの頻度で良好との診断がなされており、かなり回復したものとみられること、ところが、原告は、本件第二事故後から、スパーリング、モーレイ、ジャクソン検査とも陰性で痺れ、頚部痛、全身倦怠感などが目立つようになり、本件第二事故が、再び原告の症状を悪化させる契機となったこと、そして、鹿山医師の診断では、再び、傷病名は頚部挫傷、腰部挫傷と診断され、概ね、頚部痛、右上肢痺れ感著明、右肩部痛が持続し、握力が低下し、引続き治療が継続されていたこと、その後、同医師作成の昭和五九年五月二二日付け診断書では、頚部痛、右手シビレ肩甲部重圧感、持続、後遺障害あり、同月一四日固定と診断され<証拠>、同じく、自動車損害賠償責任保険後遺障害診断書<証拠>では、傷病名は頚部挫傷、腰部挫傷、同月一六日症状固定、他覚所見及び検査結果は、握力右二四kg、左三五kg、スパーリング症候、ジャクソン症候、右三、四指の知覚鈍麻、痺れいずれもプラス、X-P(頚椎)C五/六狭小化、前屈位側向側に角状変形プラス、障害の程度及び内容は、神経学的に左外転神経麻痺、右内耳障害、事故との関連及び予後の所見として、異常に頑固な眩暈肩こり、意識障害(一回のみであるが)、外転神経、内耳障害等より就業にかなりの障害を伴うものと考えると診断されていること、その後も治療が継続されたが、原告の症状はほぼ同様であったこと、ところが、原告は、松戸市立病院に昭和五九年一一月五日から一三日まで入院し、翌一四日から同年一二月一〇日まで通院したが、診断は、傷病名は外傷性頚部症候群、肩関節周囲炎とされ、右肩関節痛激しい、肩凝り、眼性疲労、頭重とされていること<証拠>、鹿山医師作成の昭和六〇年七月二六日付け自動車損害賠償責任保険後遺障害診断書<証拠>では、傷病名は右肩関節腱板断裂、頚椎捻挫、昭和六〇年六月二八日症状固定、他覚所見及び検査結果は、回旋腱板損傷、スパーリング症候、ジャクソン症候ともプラス、事故との関連及び予後の所見として、右肩回旋腱板断裂については受傷が一つの起因になっている可能性が十分考えられる、また、再度にわたる頚部の受傷は上肢に対する障害に対してより強い影響を与えることは自明の理である、したがって、右上肢を使用する職業に対して障害が大と考えるとされていることが認められる。

以上の事実によれば、本件第一事故に起因する原告の症状は、遅くとも本件第二事故直前(昭和五八年一月一五日)においては、かなり軽快したが、完全には治癒しないまま症状が固定し、頚椎捻挫による神経症状の後遺症が残っている状態にあったものであり、その程度は、後遺障害等級一二級一二号に該当するものというべきである。そして、本件第二事故により、頚椎捻挫による神経症状がより悪化したが、治療の結果、遅くとも昭和五九年五月一六日には再び症状が固定し、頚椎捻挫による神経症状の後遺症が残っている状態にあったものであり、その程度も後遺障害の等級は依然一二級一二号に該当するものというべきである。

<証拠>によれば、本件第一事故の場合、原告には頚部挫傷、腰部挫傷は生じないとの指摘があるが、<証拠>によれば、自動車事故では色々の衝突の態様があり、首ののぞける程度、すなわち過伸展の程度の大小で障害の程度が違うが、原告の場合、最初追突され原告車両が四・五メートル前に押し出されており過伸展の程度はかなり大きかったと推測され、腰部まで傷めていることからも上半身をかなり振っていることが窺えることが認められるから、<証拠>の記載は採用しない。また、<証拠>によれば、原告の椎間板C五/六に加齢性の狭小化がみられるが、原告の場合、この加齢性の狭小化に加えて、本件第一事故による衝撃により病状発生を強める作用が働いたと考えられることが認められる。原告の視力障害については、本件第一事故後九か月後に生じていること、<証拠>によっても、因果関係を全く否定することはできないと述べているにとどまり、本件事故との因果関係は依然明らかでなく、これを認めるに足りる証拠もない。<証拠>によれば、左外転神経麻痺、内耳障害は、本件第一事故後二年八か月後に生じており、それまでは原告の愁訴もなく、本件第一事故によるものではないことが認められる。同証人は、これが、本件第二事故が引き金になったと考えると証言しているが、本件事故との因果関係は依然明らかでなく、これを認めるに足りる証拠もない。<証拠>によれば、本件第二事故の場合、原告には頚部挫傷、腰部挫傷は生じないとの指摘があるが、<証拠>によれば、原告の本件第二事故の態様及びその際の原告の動作は左右、上下前後方向の力が作用し、脳圧、脳幹に重大な影響をしたと考えられることが認められるから、<証拠>の記載は採用しない。さらに、原告は、右回旋腱板損傷が発症し、これも本件各事故によると主張するところ、なるほど、<証拠>には、その趣旨の記載があるが、他方、松戸市立病院の診断は肩関節周囲炎とされていることからすれば、右回旋腱板損傷が発症していたか自体疑いが残り、仮に右回旋腱板損傷が発症していたとしても、その右回旋腱板損傷の発症が本件各事故によるものかについて検討するに、右回旋腱板損傷の発症は、昭和五九年一〇月二七日のことであり、本件第一事故より三年二か月位後、本件第二事故よりも一年九か月余り後のことであり、しかも、<証拠>によれば、回旋腱板損傷の症状は、急激に起こる断裂痛であり、昭和五九年一〇月二七日以前に発症していたとは考えにくいこと、<証拠>によっても、筋肉が弱っている場合は通常の日常生活をしていても生じる場合があり、本件第二事故で断裂を起こし易い状態を作ってしまったことも考えられますというが、発生原因は掴みづらく加齢性と神経系統に障害があり筋肉が細くなっている場合が考えられ、原告の場合、筋肉の弱化状態から起こったと判断しているというのみで、それ以上に本件第二事故との因果関係を認めるに足りる証拠もないからすると、本件各事故との因果関係は依然明らかでないといわねばならない。しかも、前記<証拠>は、後遺障害診断書であるが、その記載からみても、原告の症状は、昭和五九年五月一六日付け診断書<証拠>と比較しても回旋腱板損傷の点を除くと変化はあまりなく、後遺症の内容は継続していたとしてもそれが憎悪したとは認められないので、本件第二事故に起因する原告の症状の固定時期が、遅くとも昭和五九年五月一六日において症状が固定しているものとの前記判断を左右するものではない。

五  損害

1  第一事故による損害(昭和五六年八月三〇日から昭和五八年一月一五日までの損害)

(一) 治療費 金一八〇万〇〇八六円

<証拠>によれば、原告は、昭和五六年八月三〇日から昭和五八年一月一五日までの間に、入院日数三一二日、通院実日数一八一日にわたって、本件第一事故による傷害の治療を受け、その治療費として合計金一八〇万〇〇八六円を要したことが認められ、右認定を左右する証拠はない。

(二) 入院諸雑費 金一八万七二〇〇円

原告が、本件第一事故による傷害のため、三一二日入院したことは、前記認定のとおりであり、その間入院雑費として少なくとも一日当たり金六〇〇円、合計金一八万七二〇〇円を支出したことは容易に推認されるところである。

(三) 通院交通費 金三万八四五〇円

<証拠>によれば、原告が、前記期間の通院のため要したタクシー代は、合計金三万八四五〇円であることが認められ、その余の通院交通費については、その金額を確定するに足りる証拠はないので、後記慰謝料算定の事情として考慮するにとどめる。

(四) 休業損害 金八六五万六二〇〇円

<証拠>によれば、原告の仕事は、高級婦人服の服地の裁断であるが、本件第一事故による前記受傷のため、昭和五六年八月三〇日から昭和五八年一月一五日までの全期間(五〇四日間)右仕事ができなかったことが認められ、<証拠>によれば、本件第一事故の日の直前の昭和五六年五月から同年七月までの三か月間の売上高は、東都服装に対し、合計金一六九万〇五〇〇円、株式会社ブルーファッションに対し、合計金七五万七二四〇円、総合計金二四四万七七四〇円であることが認められるところ、その間の諸経費は、<証拠>によれば、電気代合計金三万一六七七円、電話代合計金四万一二八〇円、また、<証拠>によれば、昭和五六年六月一二日の運賃金一万六六〇〇円、同年七月一三日の運賃金一万二〇〇〇円、同年八月一九日の運賃金一万二五〇〇円(平均すると、金一万三七〇〇円)であることが認められるが、このうち、運賃については、<証拠>によれば、前記期間の納品回数は、東都服装に対し、合計二八回、株式会社ブルーファッションに対し、合計三〇回であることが認められ、その都度運賃を要したものと推認されるから、一回の運賃を金一万三七〇〇円とみて計算すると、総運賃は合計金七九万四六〇〇円となる。そうすると、原告の一日当たりの実収入は、金一万七一七五円(計算式、(金二四四万七七四〇円-金三万一六七七円-金四万一二八〇円-七九万四六〇〇円)÷九二日=金一万七一七五円、小数点以下切捨て-以下同じ)であるから、右休業期間の休業損害は、金八六五万六二〇〇円となる。

(五) 逸失利益 金三八三万〇二九五円

前記認定の原告の後遺障害の内容及び等級判断等の事情からすれば、原告は後遺障害固定日である昭和五八年一月一五日から五年間、労働能力を一四パーセント(後遺障害等級一二級一二号)喪失したものと認め、新ホフマン方式(係数四・三六四三)で年五分の割合による中間利息を控除して計算すると、逸失利益の現価は、金三八三万〇二九五円(計算式、(金一万七一七五円×三六五×〇・一四×四・三六四三=金三八三万〇二九五円)となる。

(六) 慰謝料 金二五〇万円

前記認定の本件事故の態様、原告の傷害の部位、受傷内容、治療経過、後遺症の内容及び程度、日常生活上及び職業上の精神的労苦等諸般の事情を考慮すると、本件第一事故によって原告が受けた精神的苦痛を慰謝するために相当な額は金二五〇万円をもって相当と認める。

(七) 以上合計金一七〇一万二二三一円

(八) 過失相殺

原告の前記過失を考慮し、右損害の二割を減額すると、原告の損害額は、金一三六〇万九七八四円となる。

なお、原告には、加齢性と目される椎間板狭小化が認められることは前記認定のとおりであるが、これによりはるかに重篤な結果が生じたとまでは認めるに足りないから、損害額の割合的減額はしない。

2  第二事故による損害(昭和五八年一月一七日から昭和五九年五月一六日までの損害)

(一) 治療費 金二七万四一三九円

<証拠>によれば、原告は、昭和五八年一月一七日から昭和五九年五月一六日までの間に、通院実日数三二四日にわたって、本件第二事故による傷害の治療を受け、その治療費として合計金二七万四一三九円を要したことが認められ、右認定を左右する証拠はない。

(二) 入院諸雑費 金〇円

原告が、本件第二事故による傷害のため、入院したことがないのは、前記認定のとおりであるから、入院雑費は認められない。

(三) 通院交通費 金八六三〇円

<証拠>によれば、原告が、前記期間の通院のため要したタクシー代は、合計金八六三〇円であることが認められ、その余の通院交通費については、その金額を確定するに足りる証拠はないので、後記慰謝料算定の事情として考慮するにとどめる。

(四) 休業損害 金七一七万八二二〇円

<証拠>によれば、原告の仕事は、高級婦人服の服地の裁断であるが、本件第二事故による前記受傷のため、昭和五八年一月一七日から昭和五九年五月一六日までの全期間(四八六日間)右仕事ができなかったことが認められ、その間の原告の一日当たりの実収入は、金一万四七七〇円(計算式、金一万七一七五円×(一-〇・一四)=金一万四七七〇円)であるから、右休業期間の休業損害は、金七一七万八二二〇円となる。

(五) 逸失利益 金二六九万〇一四四円

前記認定の原告の後遺障害の内容、等級判断、原告が本件第一事故から引続き治療を受けていたこと等の事情からすれば、原告は、後遺障害固定日である昭和五九年五月一六日から四年間、労働能力を一四パーセント(後遺障害等級一二級一二号)喪失したものと認め、新ホフマン方式(係数三・五六四三)で年五分の割合による中間利息を控除して計算すると、逸失利益の現価は、金二六九万〇一四四円(計算式、(金一万四七七〇円×三六五×〇・一四×三・五六四三=金二六九万〇一四四円)となる。

(六) 慰謝料 金二〇〇万円

前記認定の本件事故の態様、原告の傷害の部位、受傷内容、治療経過、後遺症の内容及び程度、日常生活上及び職業上の精神的労苦等諸般の事情を考慮すると、本件第二事故によって原告が受けた精神的苦痛を慰謝するために相当な額は金二〇〇万円をもって相当と認める。

(七) 以上合計金一二一五万一一三三円

(八) 過失相殺

原告の前記過失を考慮し、右損害の二割を減額すると、原告の損害額は、金九七二万〇九〇六円となる。

なお、前記のとおり、原告には、加齢性と目される椎間板狭小化が認められることは前記認定のとおりであるが、これによりはるかに重篤な結果が生じたとまでは認めるに足りないから、損害額の割合的減額はしない。

六  損益相殺

本件第一事故による損害については、被告恵子、被告博及び被告日産火災が、本件第二事故による損害については、被告康弘、被告宗一郎及び被告大正海上が、それぞれ共同不法行為者というべきであるが、本件第一事故と本件第二事故とは、関連共同性が認められないから、共同不法行為の関係に立たないというべきである。

原告主張の損益相殺の事実は、原告と被告恵子、被告博及び被告日産火災との間では争いがなく、原告と被告大正海上との間では、同被告の支払額は争いがないところ、弁論の全趣旨によれば、損益相殺の内容及び額は、原告主張のとおり(すなわち、被告恵子及び被告博から、金二七七三万八三一二円、被告日産火災から、後遺障害等級一二級の自賠責保険金として、金二〇九万円、被告大正海上から、金三二九万円(自賠責保険金傷害分として、金一二〇万円及び後遺障害等級一二級の自賠責保険金として、金二〇九万円))であることが認められる。

そうすると、本件第一事故による損害金一三六〇万九七八四円から被告恵子、被告博及び被告日産火災の支払額合計金二九八二万八三一二円を控除すると、残損害金は零となり(後記第二事件における被告日産火災の不法利得金を考慮しても同様である。)、本件第二事故による損害金九七二万〇九〇六円から被告大正海上の支払額金三二九万円を控除すると、残損害金は金六四三万〇九〇六円となる。そして、前記のとおり、被告大正海上は、原告に対し、既に、金三二九万円(自賠責保険金傷害分として、金一二〇万円及び後遺障害等級一二級の自賠責保険金として、金二〇九万円)を支払っており、原告の後遺障害の程度からすれば、同保険の契約範囲内の損害は全て填補済みというべきである。

七  弁護士費用

弁論の全趣旨によれば、原告は、本件訴訟を原告代理人に委任し、相当額の費用及び報酬の支払いを約束しているものと認められるところ、本件事案の内容、審理経過、認容額等に照らすと、原告が本件第二事故による損害として被告康弘及び被告宗一郎に対して求め得る弁護士費用の額は、各自、金六四万円とするのが相当である。

八  まとめ

1  原告の被告恵子、被告博、被告日産火災及び被告大正海上に対する本訴請求は、いずれも理由がないから棄却すべきである。

2  原告の被告康弘及び被告宗一郎に対する本訴請求は、各自、合計金七〇七万〇九〇六円及びこれに対する本件第二事故発生の日である昭和五八年一月一六日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるから認容し、その余は理由がないから棄却すべきである。

第二  第二事件について

一  請求原因1、2の事実及び3の主張は当事者間に争いがない。

二  前記認定のとおり、原告の本件第一事故による傷害については、遅くとも本件第二事故の前日である昭和五八年一月一五日にはその症状が固定していたものであるから、その後の原告の傷害に対する治療は、本件第一事故と関連性がなく、相当因果関係はないというべきである。

三  不当利得金

<証拠>によれば、被告日産火災は、被告恵子が原告に対し、本件第二事故による損害賠償債務を負わず、したがって、その部分では被告日産火災が原告に対して前記保険の契約範囲内で支払うべき義務がないにもかかわらず、これがあるものと誤信して、昭和五八年一月一六日以降の治療費として、昭和五八年四月一日から昭和五九年八月三一日まで合計金七〇万八五七三円、休業損害として、昭和五八年一月分から昭和五九年八月分まで一か月金七七万六八七一円の割合による一七か月分合計金一三二〇万六八〇七円、総合計金一三九一万五三八〇円を支払ったことが認められるが、このうち、前記のとおり、昭和五八年一月一日から同月一五日までの一五日間は、本件第一事故による休業損害の期間というべきであるから、前記のとおり、一日金一万七一七五円を基礎に右期間の休業損害を計算すると合計金二五万六二五円となり、これは法律の原因による支払いであるからこれを控除すると、結局、被告日産火災は、残金一三六五万七七五五円の損失を受け、原告は、法律上の原因なく同額の利得を得たことになる。

四  よって、被告日産火災の原告に対する民法七〇三条に基づく本訴請求は、金一三六五万七七五五円及び内金一一五八万四七六七円に対する訴状送達の日の翌日である昭和六一年一〇月一八日から、内金二〇七万二九八八円に対する訴変更申立書送達の日の翌日である平成二年一月一九日から、各支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるから認容し、その余は理由がないから棄却すべきである。

第三  結論

以上のとおりであるから、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法八九条、九二条、九三条を、仮執行宣言につき、同法一九六条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 中本敏嗣)

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